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宇都宮地方裁判所 昭和42年(行ク)1号 決定 1967年3月16日

申立人 東照宮

相手方 栃木県収用委員会

主文

相手方が、申立人に対し、別紙目録記載の物件について昭和四二年二月一八日になした収用裁決の処分は、当裁判所昭和四二年(行ウ)第二号土地収用裁決取消請求事件の判決が確定するまで、その効力を停止する。

申立費用は相手方の負担とする。

理由

本件申立の趣旨および理由の要旨は、別紙申立書のとおりである。

よつて判断すると、申立人提出の疎明資料(その引用にかかる当庁昭和三九年(行ウ)第四号事件の証拠資料を含む。)によると、本件は、右収用裁決処分の効力が発生することにより申立人に生ずる回復の困難な損害を避けるため緊急の必要がある場合に該当するものと認められ、また、本案について理由がないとみえるときにも当らないのみならず、右処分の効力を停止することによつて公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとも思料されないので、本件申立は理由があるから、行政事件訴訟法第二五条第二項により、又、申立費用の負担については同法第七条、民事訴訟法第八九条を適用して、主文のとおり決定する。

(裁判官 石沢三千雄 小中信幸 武内大佳)

(別紙)

目録

土地の所在

地番

地目

公簿上の地積

収用する土地の面積

実地の状況

日光市山内字中山

二三七八の一

境内地

四五八坪五四

三m2六九

一〇m2八三

一九m2三九

境内地

二三七八の二

一七七坪五〇

〇m2一三

二三七九

二一三二坪四〇

三七六m2六五

六八m2〇六

(土地使用権付)

(別紙)

申立書

(申立の趣旨)主文同旨

(申立の理由)

一、相手方は、起業者栃木県知事の申請に基き、申立人所有の別紙目録記載の物件につき、昭和四二年二月一八日、収用の時期を同年四月一〇日とする収用裁決の処分をなした。

二、しかし、収用にかかる右物件は、いずれも、昭和二八年一二月二二日厚生省告示第三九四号によつて国立公園日光山内特別保護地区の一部として指定されており、従つて、右は、自然公園法による国立公園の区域内にある国立公園事業の用に供している土地であるから、土地収用法第三条第二九号、第四条によつて、「特別の必要」がなければ収用することのできない土地である。

然るに、かかる「特別の必要」もないのになされた右収用裁決の処分は違法である。

三、土地収用法によれば、「事業の認定」をするには、同法第二〇条各号の要件のすべてに該当しなければこれをすることができない。しかし、本件土地について、昭和三九年五月二二日に建設大臣がなした事業の認定は、同法第二〇条第三号に定める「事業計画が土地の適正且つ合理的な利用に寄与するもの」とは認められないのになされた違法のものであり、従つて、この違法を承継してなされた本件収用裁決の処分も違法である。

四、土地収用法第二〇条第四号は、「土地を収用又は使用する公益上の必要があること」をも事業の認定の要件としている。この要件は、行政庁の裁量権の問題であるが、建設大臣がなした右事業の認定は社会通念上著しく妥当を欠き、裁量権の範囲を逸脱した違法のものであり、従つて、この違法を承継してなされた本件収用裁決の処分もまた違法である。

五、そこで申立人は、相手方を被告として、右収用裁決取消の訴を提起したが、万一右裁決が執行されると、太郎杉外一四本の老杉の伐採等により、申立人は回復すべからざる損害を受けるおそれがあり、かつ、収用の時期が昭和四二年四月一〇日と切迫しているので、右裁決処分の効力を停止されたく、本申立に及んだ次第である。

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